もいすちゅ〜の水分講座
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トレーサビリティ
について

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トレーサビリティとはなにか

トレーサビリティとは何を意味する言葉でしょうか?
トレーサビリティ(traceability)という英単語を分割するとtraceとabilityに分けることができます。Traceは“辿(たど)ること”、“追跡”という意味があります。Abilityは“できること”、“能力”という意味があります。
二つの言葉をまとめてトレーサビリティは“辿(たど)ることができること”という意味になります。

図:トレーサビリティとはなにか

1 二つの意味のトレーサビリティ

トレーサビリティではいったい何を辿っているのでしょう?産業界では次のように二つの事柄を辿る言葉として使われています。
・流通経路を辿ることができること(流通経路のトレーサビリティ)
・計測機器の測定値の基準を辿ることができること(計量トレーサビリティ)

1)流通経路のトレーサビリティ

2000年前後から諸外国の法令や国際規格(CODEX,ISOなど)で食品に関して流通経路のトレーサビリティが要求され、日本でも農林水産省が中心となり取り組みが進められています。背景としては、以下のようなことが挙げられるでしょう。
・遺伝子組み換え作物の登場や、逆に有機野菜の人気の向上
・食物アレルギーやBSE問題
・産地偽装問題
しかし、最近になって、流通経路のトレーサビティは、食品業界に留まらず、様々な目的で多様な産業界に広がりを見せています。
例えば、機械を製造する場合、製品の不具合の原因を特定するためには、ねじ1本ですら、材質や加工方法を“辿る”ことが必要となります。また材料として使用する化学物質も人の健康や環境に悪影響をもたらす物質の規制が強まっており、部品の一つ一つの材質を“辿る”ことが必要となってきています。
右図は機械製造の場合に不具合を辿るためのトレーサビリティです。

図:流通経路のトレーサビリティ

2)計量のトレーサビリティ

計量トレーサビリティはJISZ8103によると以下のように表現されています。 現在のJISの表現:

「不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって、決められた基準に結びつけられ得る測定結果または標準の値の性質。基準は通常、国家標準または、国際標準」

表現が複雑ですね
以前はもう少しシンプルに表現されていましたので、そこからご説明したいと思います。
以前のJISの表現:

「標準器又は計測器がより高度の標準によって次々に校正され国家標準につながる経路の確立している度合」

まず、用語の定義として、校正とは何かですが、「値の信頼性を確保するために別の信頼できる計測機器と比較すること」です。これをもとに上のJISの文章を考えると以下のようになります。
まず、ある計測器があったとすると、その測定値が信憑性を持つために、何らかの基準となる計測器と比較する(=校正する)ことが必要です。その基準となる計測器もそれがおおもとの基準(例えば国家標準)でない限り、何らかの基準となる計測器と比較する必要があります。これをつなげていくと例えば以下のようになります。

写真:デジタル出力

これよりも長くなる場合もありますが、このように校正の連鎖で国家標準までつながっている、ということが「トレーサビリティが確保されている」ということなのです。国家標準にはどのようなものがあるかは、「国際標準規格と基準器」の頁をご参照ください。

2 不確かさについて

現在のJISの表現と旧JISの表現を比較すると、「不確かさ」による表現が明記されたことが大きな変更点でしょう。
それでは「不確かさ」とはなんでしょうか?

不確かさは「測定値のばらつきの度合いを表す値」です。
どうしてそのようなものが必要なのでしょう?
ものさしで長さを測る場合を考えてみてください。

あるものの長さを計測したところ、10.13㎜(小数点第2位は目分量)だったとします。
この10.13㎜は以下のように様々な誤差が含まれています。
・ものさしそのものが持つ誤差
・測ったときの温度によるものさしの伸び縮み
・測定者の目線に角度の違い

じゃあ本当の値、つまり真の値はいくつでしょうか。
これは実はわかりません。計測回数を増やしても、真の値が存在する範囲を狭めることはできても、特定することはできません。不確かさとは、測定値を基準として真の値が含まれる範囲を示しています。今までは「誤差」という言葉が一般的でした。しかし、誤差という言葉は「真の値からのずれ」を示す言葉であり、上記のように真の値は特定できないのだから、使うのは不適当、という考えが一般的となり、誤差に代わる言葉として、不確かさが広まりました。

3 不確かさとトレーサビリティの関係

トレーサビリティを確保するために、校正の連鎖を行う上で注意しなければならないことはなんでしょう?
前述のとおり、不確かさは「真の値が存在する範囲」ですから、値が小さい方が、測定値の信頼性が高くなります。

また、不確かさは誤差の要因を集めた総和のようなものですから、当然誤差の要因が少なければ少ないほど小さくなります。つまり、「トレーサビリティを確保する」ために「校正の連鎖」を繰り返した場合、校正回数が多ければ多いほど、不確かさは大きくなり信頼度は減ります。各校正ごとに環境の要因や機器の持つ誤差、測定者による誤差が積もり積もっていくからです。一般には一回校正を増やすと不確かさは倍になるといわれています。
ですから、トレーサビリティを確保するために校正をする場合でも、できるだけ国家標準に近い機器で校正を行った方が良いのです。

写真:デジタル出力

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