オイル中水分計
1 オイルの性質と劣化について
工業用オイルには 目的によって 焼入油、潤滑油、作動油、絶縁油等様々なオイルがあります。
それらのオイルはすべて製造過程や製品の性能維持に欠かせないものですが、空気にふれ、時間が経過するとともに水分を含み、劣化していきます。オイルが劣化すると、オイルの性能が正しく発揮されません。以下に例を挙げます。
用途 | オイル種類 | オイル劣化の影響 |
---|---|---|
熱処理 | 焼入油 | 焼入れ油への水分の混入は、焼割れ、硬度不足、光輝性の低下といったトラブルにつながります。 |
錆び止め | 防錆油 | 防錆油に水分が含まれると製品のさび発生を防ぐ効果は低下します。 |
エンジン | エンジンオイル | 自動車、建機、船舶等、特に船舶の場合は港に停泊するタイミングでしか、オイルを性状分析に出すことが出来ません。長い期間航海を続ける船舶では、分析の結果を受け取るまでのタイムラグは、時に致命的なトラブルを引き起こします。 |
変速機 | ATF、CVTF | 変速機に封入するATF、CVTFに含まれる水分は、変速機の性能低下、寿命に影響を与えます。 |
潤滑システム | 潤滑油 | 潤滑油に水分が含まれると軸受やギアなどの摺動部品の機能低下、損傷といったトラブルにつながります。 |
変圧器 | 絶縁油 | 電気絶縁油中の水分は、絶縁破壊電圧などの電気特性を低下させます。 |
タービン | タービンオイル | タービンオイル中の水分は、潤滑性能の低下につながります。 |
オイルの劣化とオイル中水分の量には相関関係があるため、オイル中の水分量を計測し、オイルの劣化度合を把握し、オイルの交換時期を予測することが重要です。
当社のオイル中水分計は、測定のタイミングや目的にあわせて
1)設置して連続測定が可能なオンライン測定タイプ(EE360/EE381)
2)スポットチェックに便利なハンディタイプ(TEKHNEPort-Oil)
をご用意しております
2 オイル中水分計の測定原理
1)そもそも、“オイル中水分”とはなんでしょうか?
当社で対象にしている“オイル中水分”はオイルに溶解している状態の水分量のみを意味しています。オイルの劣化度合と相関があるのは、このオイルに溶解している水分量の増加だからです。
水分がオイルに溶解できる量を超えて、オイルと水分が分離している状態で存在(フリーウォーター)している場合やオイルの水分が混合されているが溶解はしていない(乳化)状態で存在しているときは、既に水分量としては飽和しているため、測定はできません。
オイル中の水分量が飽和する前に測定して、劣化を未然に防ぐことが、オイル中水分計で測定する目的です。
2)当社のオイル水分計の測定原理
高分子材料を用いた静電容量式(インピーダンス法)です。
吸湿性の高分子を導電金属で挟み,このコンデンサー容量を測定し水分量に換算します。
水分が高分子に吸着すると、導電層間の容量が変化することを利用した原理です。
水分活性値(aw)で測定し、機器内でppmへと換算されます。
この換算のためにカールフィッシャー容量滴定方法を用いますので、当社オイル中水分計のppm測定値はカールフィッシャー方式とも相関が取れた値となります。
水分活性値(aw)とは
水分活性値とは、そのオイル中に含むことができる最大の水分量すなわち飽和水分量を1としたときの値です。0~1で表されます。
相対湿度%RH(空気中に含むことができる最大の水分量を100%としたときの数値)と同じ考え方、測定原理です。
当社のオイル中水分計はaw、ppmどちらの単位でも計測可能です。
ppmは絶対水分量ですので、現状、そのオイルが含んでいる水分量が分かります。しかし、そのオイルがあとどのくらいの水分を含むことができるか、すなわちどれくらい劣化が進んでいるのか、については、そのオイルの飽和水分量を把握していない限り、わかりません。
awで測定をすると、そのオイルが完全に飽和してしまう前に感知することができるため、ppm単位での計測との併用を推奨しております。
例:
①飽和水分量が1000ppmのオイルを計測して100ppmだった
②飽和水分量が200ppmのオイルを計測して100ppmだった
①、②はどちらも100ppmですが、②の方が飽和に達するまであと100ppmしかない、ということになります。awで計測すると ①0.1aw、②0.5awとなり、劣化度合を割合で把握することができます。
3)aw とppmの関係
水分活性値(aw)と絶対水分量(ppm)の関係式は
ppm=aw×10(B+A/T)
A:温度に関する係数、B:濃度に関する係数、T:ケルビン温度(摂氏(℃)+273.15)
で表されます。
このA,Bの係数がオイルによって異なるため、カールフィッシャーによる分析と計算によってA,Bを求めて、本体に設定すれば、ppmへ換算表示することができます。
3 当社オイル中水分計の特長
1)取り扱いが簡単
カールフィッシャー方式とは異なり、特別な技術・試薬が必要ありません。
ハンディタイプなら、プローブをオイルに挿入するだけで測定が可能です。(5分から10分で応答します。)
連続測定タイプなら、オイル流路にプローブを設置すれば、水分変化を連続でモニターでき、オイルの交換時期を逃しません。
2)様々なオイルの定量評価が可能
ppm換算表示の際は当社にてカールフィッシャー方式で分析を実施し、そのオイルにあった換算係数を設定いたします。
よって、ppm測定でも様々なオイルの計測が行え、かつカールフィッシャー方式と同等の計測精度を保つことができます。
3)メンテナンスが容易
お客様ご自身で、センサー部を洗浄することができます。
簡易校正キットもご用意しておりますので、お客様ご自身で簡易校正が可能です。
プローブ交換・センサー交換等の修理、校正も国内で実施可能です。
当社技術員が現地を訪問して、現地で校正を実施することも可能です。
もいすちゅーの水分講座
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- 露点・湿度について考える
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- 計測器について
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- 校正について
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- 測定系を構築しよう
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- 規格について