塗装
自動車・船舶等塗装用途の温湿度(露点)・風速計測による静電気対策
私たちの身の回りには、塗装されたものがたくさんあります。例えば、自動車です。新車を見ると、光沢のある綺麗なボディの塗装に目を奪われます。
新しいスマートやタブレットが発売されて、自分好みの色があるとつい欲しくなってしまいますよね。塗装を行わず、素材そのものだけですと、見た目が悪かったりすぐに錆びたり傷がつきやすかったりとデメリットが多くあります。その製品を使用する用途や目的によって、塗装にも様々な種類があります。
今回は塗装工程においてテクネ計測の機器がどのようにお役に立てているかご紹介したいと思います。
塗装とは
塗装とは、素材の表面に塗料を塗ることで色を付着させる表面加工のひとつです。
また、ただ色を付け見た目をよくするだけはなく、表面を塗料で覆うことで多層構造の膜ができ、錆などの腐食を防ぐことができます。
塗装によってできる層は、大別すると 下塗り層・中塗り層・上塗り層に分けることができます。それぞれの層に機能が付与されていることもあり、
適応した塗料を選択することも重要です。
塗装の役割
塗装には、3つの役割があります。それは、「美観」「保護」「機能」です。
まず、美観効果とは、塗装によって素材を様々な色に塗ることや、ツヤ有り無しなどで見た目をよくする効果のことです。
特に光の反射を考慮しなければならない製品においては、粉体塗装を行うケースが多いです。
次に保護効果とは、素材の表面を塗料が覆うことで直接素材が外部に接触することを避けることにより、錆などの酸化や円買いなどの腐食、
摩耗などから素材を守る効果です。つまり塗装によって製品の耐久性を大幅に向上させることができます。
そして機能効果とは、塗料の中に特殊な成分を加えることにより、付加的な機能を追加できることです。
例えば、防カビや抗菌といった成分を加えることにより付加的な機能を追加できることです。
素材や製品の耐久性の向上に加え衛生面などの付加価値を付けることができます。
塗膜の役割
素材に塗料を塗った時にできる膜を塗膜といいます。
前述よりこの塗膜は下塗り・中塗り・上塗りの3つの工程によって形成されます。
下塗りは、素材とその後の工程である中塗り・上塗りの塗装との密着度を高めるための工程です。
防食性を高めるための前処理を行ってから塗装を行うことが多いです。
中塗り・上塗りは、素材に色を付けたり、保護するための工程です。
前述の美観効果、保護効果、機能効果にあたり、このように何度か塗装の工程を行うことで、塗膜を形成していきます。
工業用塗装について
一言で塗装と言っても、様々な塗装方法があります。ここでは各塗装方法の紹介と、テクネ計測の関連を紹介します。
静電塗装
冬になるとドアノブを触った時などに手がビリっとした経験は有りますよね。これは静電気の作用を用いたものですが、この静電気を使った塗装方法のことです。
静電塗装とは、静電気の作用を用いたもと申し上げましたが、静電塗装装置を負極とし、塗装したい素材を正極とし、この両極間に高電圧をかけます。
これにより静電界をつくります。そして、塗料の粒子に負の電荷を帯電させて、素材に電気的に接合させ塗装する方法です。
静電気にはクーロン力という力が働いています。クーロン力とは、正に帯電したものと負に帯電したものには引き合う力が、
正に帯電したもの同士、負に帯電したもの同士では強く反発する力が働く力のことです。
静電塗装ではこの力を利用しているため、塗料が素材に付着しやすくなるため少ない塗料で塗装が可能であるという特徴をもちます。
また、この様に電気の力を利用するため、複雑な形状や大きいものにでも均一に塗装ができるので、
現在では自動車や船舶、建築等の幅広い業界で多く使用されています。静電塗装においては、静電界の管理が重要となり、
そのためにその場所の雰囲気管理が重要となります。
よって、ここでテクネ計測の高精度の温湿度計が活躍しております。
また、この雰囲気管理のために、塗装乾燥設備等に入る風量のコントロールも重要となり、ダクト内等の湿度や露点コントロール、
風量コントロールに当社の温湿度計・露点計・マスフローメーター・風速計などが使用されております。
●静電気と帯電について
静電気と帯電について、補足として以下説明します。静電気は、簡単に言うとモノが帯電している状態、帯電しているそのもののことを指します。
モノとモノがすり合わされると静電気がおきますが、必ずどちらかが正にどちらかが負に帯電します。
正・負いずれに帯電しやすいかは、材質によります。2種類の材質を擦った際、正に帯電しやすい材質を上位に負に帯電しやすいものを下位に並べた序列の表順に並べたものを摩擦帯電列と呼んでいます。
例えば、ナイロンとポリエステル繊維を擦ると、ナイロンは正に帯電しポリエステルは負に帯電します。
同じ性質のナイロンとウール(どちらも正に帯電)の場合だと、静電気が発生しにくいです。この理由は、もともと帯電しにくい綿等は、
そもそも静電気が発生しにくいためです。
一方で、金属に代表される、電気を通す導電体でもよく静電気の発生が起こります。これも同様に、2つのものが擦れると静電気が発生するというもので、
この点は他の材質と同じですが、こちらは少し静電気の性質が変わってきます。
導電体は、もともと帯電されている状態になっています。なので、アースと呼ばれる導電体を大地(地球)と繋げる状態にすることが重要です。
この状態にすることで、もし人が導電体に触ってもアースをしていれば電流が流れにくく感電を防ぐことができます。
この理由で、電化製品はアースされています。
電着塗装
塗装槽の中で水溶性の塗料を溶かし、その塗装槽に被塗物を浸します。塗料と被塗物に電気を流すことで塗膜を密着させ形成させる方法です。
被塗物を陰極に、電極を陽極にして電着を行う処理方法をカチオン塗装、被塗物を陽極に、電極を陰極にして電着を行う処理方法をアニオン塗装と呼ばれます。
静電塗装と同様に電気的に塗装を行いますので、電圧および通電時間をコントロールすることで塗装量をコントロールできるため、通常のスプレー塗装より少ない塗料で塗膜できるという特徴があります。
一部の自動車のボディの塗膜方法に使用されております。
焼付塗装
塗料に熱を加える塗装方法で、金属(鉄、アルミニウム、真鍮、亜鉛等)の強度を高めたい場合によく用いられます。
他の塗装方法と異なる点は、100℃以上の熱を加えることで化学反応(重合反応)が起こし塗装することです。
2つ以上の化合物が熱により反応し合成することでより強固な性質をもった素材を作り出すことが可能です。
焼付塗装工程は、およそ100℃~200℃程度で進められます。他の塗装方法以上に乾燥の工程を管理することが必要です。
粉体塗装
塗装というとペンキのような液体をイメージする方が多いかもしれません。しかし、粉体の塗料を使うケースもあります。
粉体塗装とは、被塗物に粉末状の固体(硬化剤、樹脂等)を吹き付ける塗装方法です。粉体塗装と静電塗装は同じ仕組みを利用しており、
静電気を使い塗布するものです。では、粉体塗装と静電塗装の違いは、粉体塗装では塗料が粉であり、静電塗装では塗料が溶剤であるということだけです。
ともに塗料を被塗物に付着させ、乾燥工程では加熱を行うことで塗装を完成させます。
自動車や船舶等の塗装の際にテクネ計測の測定器が使用されています。粉体塗装において温湿度や露点管理、風量や風速管理、
粉体の排気によるこれら計測器の影響などが重要項目となります。先述の温湿度計、露点計、マスフローメーター、風速計が使用されております。
また、湿度を一定にするため、湿度発生装置も使用されています。お客様により使用される機器は様々です。
特に精度、防爆か非防爆か、風量はどの程度か、適切な水分量はどの程度かによって様々なラインナップがあります。
どの機器がお客様に最も適しているかは、ページ右上のお問合せフォームよりご連絡して頂きましたら個別にご紹介いたします。
塗装ブース
塗装作業用を行うために隔てられたエリア、部屋を言います。
塗装面に塵や埃などの細かなゴミが付着しないことを維持し、同時に塗料が周囲に飛散することを防ぐ目的を主として使用されます。
特に塗料には人体に有害な化学物質が含まれている場合があります。作業者が毎日吸い続けると、健康被害を引き起こす可能性があります。
このため塗装ブースには排気機能や余剰塗料の回収機能といったものがあります。
これにより、作業環境を改善し、作業効率向上や塗料ミストが環境中に放出されないようにする目的もあります。
塗装ブースの基本的な構造としては、塗装室と給排気ユニットから成ります。
その種類は塗料の捕集方法により大きく2つに分けられ、フィルター式の乾式塗装ブースと水洗ブースやベンチュリーブース、オイルウォッシュブースの湿式塗装ブースがあります。
温湿度、露点または絶対湿度にて塗装ブース・塗装ルームの水分量を管理し、静電気を防止するために、当社の様々な温湿度計が使用されています。
また、ブースへの導入風量の管理のためマスフローメーター、風速計が使用されております。
まとめ
テクネ計測では、可燃性ガスや粉塵用途でも使用可能な国内本質安全防爆認定品の温湿度露点計のご用意がございます。
EE300ExおよびEE100Exがこれにあたります。また、金属筐体が選択できたり、ケミカルパージ機能により異物を除去できる温湿度露点計もあり、
計測機器にとって過酷な工業環境下での使用が可能です。
その他にも多数の露点・湿度・温度・マスフローメーター・風速計のラインナップがあり
塗装業界様に多数の実績があります。そのため、同業界での様々な重要な場面でお役に立てているのではないかと考えます。