熱処理
雰囲気炉中の露点計・酸素濃度計・オイル中水分計・腐食性ガス中水分計等計
工業炉においては、特に熱処理炉の雰囲気炉で水分・酸素濃度管理のために、当社の露点計・酸素濃度計・オイル中水分計・温湿度計・腐食性ガス中水分計が使用されます。 焼鈍炉・焼結炉・ろう付炉などの還元雰囲気処理炉、浸炭炉・乾燥炉などの雰囲気管理が必要な炉における水分・湿度管理、焼入炉におけるオイル中水分管理において当社は多くの実績を持ちます。 一方、熱処理炉の場合、結露やごみの処理、液化が懸念される溶剤などのガス、腐食性ガスなどの混入の危険性があり、同時に圧力・温度のコントロールが重要です。 これらの問題を解消するために、下野毛工場において制御盤を自社製作しております。
熱処理について
熱処理とは、材料や製品に熱を加えて加工処理することであり、金属を熱したり冷却したりして、材質そのものの性質を変化させる加工を行うものです。身の回りにあるものを作る過程や産業界でもよく活用されています。例えば、包丁、工具だけでなく自動車に使われる部品などもあり、強さや正確さなどが要求されます。熱処理を施すことで、その製品が最大限の機能を発揮できるように考えて製造されています。熱処理が適切に行なわれたかどうか、目で見て確認することは難しいです。 これは、熱処理の目的が熱を加えることによって材料の性質を変化させることだからです。 その多くは、より硬くすることが目的で強度を高めています。
熱処理炉の種類
・焼入炉
建築・土木・機械などの様々な分野で基礎的な材料となる鋼材。鋼をある温度まで熱し、高温の状態から急速に冷却する熱処理のことを焼入れと呼びます。 焼入れを行う炉を焼入炉と呼びます。 自然冷却では失われてしまう、マルテンサイト構造を常温でも維持できるよう、冷却速度の調整のために当社のオイル中水分計が使用されています。
・浸炭炉
鋼材の強度を増すために、表面に炭素を侵入させて硬化するための炉です。 「ガス浸炭炉」が一般的で900~1000℃に熱した炉内に、炭素を含む浸炭用のガスを流し、鋼材の表面から浸透(浸炭)させる熱処理の方法です。 浸炭を行ってから焼入れを行うことで、立方格子構造にくさびを入れ、滑りにくさを増すことにより、「じん性と硬さ」を両立することができます。 摩耗性に強く、疲労強度にも優れており、自動車部品などでよく使われています。 変性ガスを使用することから、測定には注意が必要です。
・焼成炉・焼結炉
粉末の材料を製品の金型に入れて成形し、加熱することで焼き固める炉のことです。 電池材料の製造やセラミックス製品製造で使われ、成形のしやすさと強度をもたせられることがメリットです。 焼き固める材料の種類によって呼び名が変わり、「焼成炉」は、酸化物系(セラミックスなど)、「焼結炉」は金属粉末などです。
・乾燥炉
あらゆる熱源を使って、製品の水分や接着剤、溶剤などを乾燥させる処理を行う炉です。目的に合わせて、様々なタイプがあり、高速乾燥させるものや運搬しながら乾燥させるもの、ひとつのかごのようなものに製品を入れて行うバッチ式の乾燥炉もあります。 一般的に炉内温度は低く、200℃程度の乾燥炉をよく拝見します。 水分の測定により乾燥度を管理する手法が用いられ、結露に強い水分計・露点計が採用されます。
・真空炉
これまで説明した炉の種類は、処理内容により分類しました。圧力に関してはほぼ大気圧です。 一方、真空炉は真空状態にして加熱を行うとのことです。熱処理過程で、酸素に触れないため表面が酸化したり、脱炭したりすることを防げます。 すでに塗装されている場合は、脱泡処理が可能でムラなく加熱できることや、製品の歪み防止などのメリットがあります。
工業炉の種類
これまで熱処理炉の種類について確認しましたが、熱処理炉は工業炉の1つで、工業炉にもいくつか種類があります。その他の工業炉の種類についてみていきます。
・溶解炉
溶解炉とは、鉄やアルミなどの金属を溶解し、どろどろの状態にするための炉です。 各種金属を融点まで加熱するため、とても大きなエネルギーが必要です。溶解状態を確認・適正化するために、当社の酸素濃度計が使用されています。
・高炉
製鉄所でもっとも大切な設備の一つです。鉄鉱石は自然界では酸化鉄(Fe2O3 / FeO2 …)の状態で存在していますので、 石炭をコークス化し熱源として石灰石とともに、まずは酸化鉄を鉄にします。鉄鉱石を還元して炭素が4%程度含まれた銑鉄を取り出します。 世界最大の化学工場といえるかと思います。
・転炉
高炉から取り出した銑鉄に酸素を吹き込み、炭素やリンなどの不純物と反応させ除去し、鋼に転換する炉です。 洋なし型をした炉が特徴で、別名「転換炉」と呼ばれることがあります。
・アーク炉
電流密度が大きいアーク放電を利用し金属材料などを融解する電気炉です。
・アルミ溶解炉
インゴットやスクラップなど固体のアルミニウム原料を700~800℃程度で溶かす炉です。
・加熱炉
加熱炉とは、あらゆる物体(気体・液体・固体)を一定の温度にまで加熱する炉です。
加熱の熱源は、ガス・電気、灯油・重油などが使われています。鋼材製造における加熱炉は主に「圧延加熱炉」と「鍛造加熱炉」があります。
―圧延加熱炉とは、スラブとよばれる鋼片を加熱し、圧力をかけて延ばし決めら
れた寸法まで延ばす加工を行う炉です。
―鍛造加熱炉とは、鍛造を行う材料を、加工ができるようにまずは必要な温度ま
で過熱します。
熱処理のプロセスの種類
熱処理の製造プロセスで分類すると、大きくは「バッチ式」と「連続式」があります。「炉」を付けて、「バッチ炉」や「連続炉」と呼ばれることもあります。
・バッチ式
一つのかごなどに製品を入れて行う熱処理炉の方式です。 毎回かごに製品を入れて熱処理を行うため、都度異なる温度条件を変更することが可能で、様々な品種の熱処理に向いています。 連続炉と異なり密閉度が高いため、真空炉と同様に外乱が入る可能性が薄いです。 よって、露点や酸素濃度の測定は限定的になります。 高付加価値品を製造する際にはバッチ炉の排気に露点計と酸素濃度計のマルチユニットを設置し状態を確認したり、供給ガスの露点を確認したり、 理論上の雰囲気を管理する場合もあります。
・連続式
ベルトコンベヤーの上に製品を置いて、ラインで流しながら順次炉の中を通過していきながら加熱する炉のことです。窯を通る時間は一定の為、大量生産に向いています。 代表的なものとしてメッシュベルト炉があります。メッシュベルト炉は、樹脂や金属でできたベルトコンベヤーで製品を搬送しながら連続して加熱する炉です。
熱処理における鉄の状態
鋼の性質には、添加物により様々な特性が挙げられます。
例えば、耐摩耗性、耐腐食性、耐食性、冷感加工性、圧縮強さ、引張強さ等。これらは、加熱の温度、冷却の仕方により変化して行きます。
また、鋼は、変態点とよばれる温度により、鋼自体の性質が変化していきます。その変態点は、構成する元素の含有量によっても変化していきます。
炭素量の含有率や温度により、炭素鋼の組織はフェライト、オーステナイト、
セメンタイト、パーライトに変化します。
・フェライト
結晶構造が体心立方(bcc)をもつ状態のことです。
・オーステナイト
フェライトを加熱すると、フェライトの持つ体心立方(bcc)から、面心立方(fcc)に変わった状態のことです。
・セメンタイト
常温にて強磁性を持ち、金属光沢があり、硬いがもろいです。
・パーライト
フェライトとセメンタイトの層状組織です。顕微鏡でみると、真珠(パール)のような光沢があります。
水分量や酸素量の測定は、様々な状態において重要ではありますが、鉄の状態変化が水分量に直接影響あるのは、やはりオーステンパ・マルテンパかと考えます。
・オーステンパ
オーステナイト状態まで加熱後、400℃程度の熱浴で温度を保持し、その後空冷することでベイナイト組織にする処理です。
・マルテンパ
マルテンサイトに変態する温度の熱浴オーステナイト状態での温度の熱浴に焼入れする処理です。
熱処理にテクネ計測が貢献できること
以上のような様々な熱処理炉において、生産効率向上や製品の品質向上のため炉内雰囲気を測定するのが一般的です。テクネ計測の露点計や酸素濃度計をはじめとする各種計測機器は、熱処理業界に多数の実績があり、様々な重要な場面でお役に立てているのではないかと考えます。