食品

パッケージ工程・プラスチック乾燥・倉庫などでの露点・酸素・温湿度計

食品をイメージする画像

食品業界においては、製品の品質維持のため、様々な計測器が使用されています。一例としては、パッケージ工程、保管倉庫、窒素ガス純度管理などで使用する温湿度計・露点計・酸素濃度計をはじめとし、ビールなどの製造工程で発生するガスのリサイクルのための純度管理に露点計などが使われています。
最近では製品の安全性を確保するため、衛生管理の手法であるHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に準拠した対応が求められています。
今回は食品業界にて、テクネ計測の機器がどのようにお役に立てるのかご紹介いたします。

原材料の管理

美味しく安全な食品を生産するためには、やはり安全で品質の良い材料を使うことが大切です。 どんなに品質の良い材料でも適切に管理されていないと傷みや腐敗の原因になります。 適切な原材料保管のためには、何が危害の要因かを明らかにすることが必要です。 私たちも温まってしまうと腐りやすいものは冷蔵庫に、冷やしすぎるとよくないものは野菜室に、凍っているものは冷凍庫へ入れたりしますよね。 この例は単純すぎますが、原材料について過去の検査データや文献から「何が入り込んでいて、そのリスクはどの程度なのか」を検討し、数値で明確に表します。

畜産物、水産物、農産物はそれぞれ異なるリスク要因があり、それに応じた管理が必要です。 また、どんなに良い原材料を使っていても加工に問題があると、良い製品は作れません。 保管だけでなく加工の過程でも、適切に管理される必要があります。その管理の項目として、温湿度管理があげられます。 美味しいジャガイモを使ってポテトチップスを作っても、完成した後に湿度の高い場所に保管していたら湿気たポテトチップスになってしまい、おいしくなさそうですよね。

製造工程の管理

食品工場では、様々な工程で温湿度計や露点計・風速計など当社の機器が活躍しています。 食品工場で使われる機器の種類や用途は、食品の種類や工場ごとに異なりかなり多岐にわたるため、ここではすべては書ききれませんが、一部の事例をご紹介いたします。

お菓子・ケーキ製造

1)パッケージ工程
ポテトチップスなどの食品包装は、生産後輸送されて私たちが食べるまでの間に、衝撃などの外的要因や温度・湿度変化などの環境要因の変化から内容物を守っています。
そもそも食品包装が無いと、スーパーなどで買うことができないでしょう。 ポテトチップスの包装は袋が少しだけ膨らんでいて、ぶつかったり落としたりしても中身のポテトチップスが割れて粉々にならないようにしています。 袋に入っているガスは、N2(窒素)が一般的に使用されています。パッケージの中に水分が混入していると味や触感が損なわれますし、酸素(O2)が入っていると酸化(酸敗)の原因となります。 湿度にもよりますが、冬場で大気の約1%、夏場では約3%が水分です。水分は、酸化を促進する一因となり、カビが発生する原因にもなります。 そのため「不活性ガス」の一種であるN2 (窒素)が充填されています。
充填する窒素に水分が含まれていないか、またパッケージ工程を行う工場内の温度湿度管理が重要になります。

2)仕上げ
ケーキ等の仕上げとして、溶かしたチョコを上から均一にかける際、風があると製造に影響が出てしまう可能性が有るため工場内に風速計が使用されております。
また、材料等に影響が出る可能性もあるので、高精度温湿度計による温度管理がチョコの質、ケーキのおいしさを決定しています。

ビール工場

1)製麦
日本では、酒税法においてビールの定義が詳細に決められています。 そのため原材料は麦芽・ホップ・水を発酵させたもので、副原料として、トウモロコシ・でんぷん(スターチ)・米・糖類などを使用することができます。 ビールで使われる麦芽は二条大麦が主流で、この二条大麦の芽を出させ、よりでんぷんを蓄えた状態の麦芽にすること(製麦)から始まります。 ここで蓄えたでんぷんを分解した糖をアルコール発酵することで、ビールを作ることができるのです。

2)仕込み
材料がそろったところでいよいよビール作りの始まりです。麦芽とその他の副原料を温水で混ぜ合わせます。 適切な温度を保持することで、麦芽の酵素の働きは活性化し、でんぷん質は糖分に変わっていきます。これをろ過し、ホップを加えさらに煮沸します。

3)発酵作業
仕込みで作った熱い麦汁を5℃程度まで冷却し、酵母を加え発酵タンクに入れます。 ホップの発酵効率を上げるために酸素濃度管理が重要です。約1週間で酵母の働きで麦汁の糖分がアルコールと炭酸ガスに分解されます。 発酵時に、圧縮空気を使用するのに露点計を使用します。 また、副産物として発生したCO2 (二酸化炭素)を再活用するために、ドライヤーで純度を上げる際に、露点計を使用します。

4)貯酒
こうして出来上がったビールは若ビールと呼ばれ、味も香りも十分ではありません。貯酒タンクで0℃程度の低温で数十日間貯蔵され、ゆっくり時間をかけて熟成し味と香りが向上します。

5)容器詰め&出荷
ビールが完成するまで、およそ2~3か月。ビールは瓶・缶・樽などに詰められて出荷されます。 瓶はリサイクルして使われるものもあり、瓶を洗う洗ビン機や、包装紙を巻く包装機、充填機、冷凍庫などにエアーが使用されており、 そのエアーの水分量をコントロールする為に露点計が使用されております。

飲料製造工場

お茶やコーヒーなどの飲料製造工場でも温湿度計や露点計などがお役に立てます。 飲料はお茶やコーヒーなどのように原料の茶葉やコーヒー豆から抽出して製造するものと、果汁やエキス、砂糖や酸味料などの原材料を混ぜ合わせて濃縮されたシロップを作るものがあります。 抽出した後に残る茶葉やコーヒー豆を廃棄する際は、そのままですと水分を多く含んでいて重くなり、廃棄コストがかさみます。 そのために乾燥させる工程で露点計・マスフローメーター等が使用されています。
それ以外にも、お菓子やビールにおける用途と同じように、充填工程や包装工程など様々な場面で露点計・温湿度計などが使われています。

天ぷら工場

天ぷら工場やポテトチップスなどの油を使う工場では油中水分計が活躍します。 油の中にある一定以上の水分が混入すると爆発・火災の原因になります。
当社が扱う油中水分計は、油の中に含むことができる最大水分量を1とし全く含まれていない状態を0とするAwという単位で水分の混入度合いを計測ができます。 油中の水分量を計測することで、油の劣化の目安にもなります。近年高騰している油を効率的に使えるようモニタリングしていくことが大切です。
油に接する部分にはSUS316が使用されており、計測器による油への不純物の混入を最小限に抑えています。

製品の管理

保管倉庫

食品の保管には、品質管理や衛生の観点から温度・湿度の管理が欠かせません。 もし、高温多湿という悪環境で保管していると、細菌の発生や変色など商品に影響がでる場合があります。 食品の場合お客様の健康を害する恐れもあり、信頼や安全性を守る為、温湿度管理には大切な役割があります。

HACCP(ハサップ)

HACCPとは

Hazard Analysis and Critical Control Point のそれぞれの頭文字をとった造語で「危害要因分析重要管理点」と訳されています。
食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、 それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。 この手法は 国連の国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格 (コーデックス) 委員会から発表され、 各国にその採用を推奨している国際的に認められたものです。【厚生労働省HPより】

HACCP方式と従来の製造方法の違い

従来の抜取検査による衛生管理に比べ、より効果的に問題のある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となるとともに、原因の追及を容易にすることが可能となるものです。 HACCPを導入した施設においては、必要な教育・訓練を受けた従業員によって定められた手順や方法が日常の製造過程において遵守されることが 不可欠です。【厚生労働省HPより】

制度化の背景

食品衛生法の一部が2018年6月13日に改正され、2020年6月1日から施行されました。 この改訂により「HACCPに沿った衛生管理」の実施が求められます。 「HACCPに沿った衛生管理」とは「食品衛生上の危害発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組(HACCPに基づく衛生管理)」と「取り扱う食品の特性等に応じた取組(HACCPの考え方を取り入れた衛生管理)」の二つの基準があります。 原則として、すべての食品等事業者(一部対象外の方もおります)の方々には、HACCPに沿った衛生管理に取り組んでいただくことになっています。

※「食品衛生法の改正について」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html
※「HACCP(ハサップ)」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html

●HACCPの7原則12手順

HACCPを導入する際には、「7原則12手順」に沿って進める必要があります。
手順1:HACCPチームの編成
手順2:製品説明書の作成
手順3:意図する用途の特定
手順4:製造工程一覧図の作成
手順5:製造工程一覧図の現場での確認
手順6:危害要因(ハザード/HA)の分析【原則1】
手順7:重要管理点(CCP)の設定【原則2】
手順8:管理基準(CL)の設定【原則3】
手順9:モニタリング方法の設定【原則4】
手順10:改善措置の設定【原則5】
手順11:検証方法の設定【原則6】
手順12:記録の維持管理【原則7】

HACCPのメリット

厚生労働省の資料によると、HACCPを導入したメリットとして割合が大きいものは、 社員の衛生管理に対する意識向上した:78.2%
社外に対して自社の衛生管理について根拠を持ってアピールできるようになった:43.1%
製品に不具合が生じた場合の対応が迅速に行えるようになった:37.7%
クレーム・事故が減少した:32.3%
の順となっています。

※「HACCPの普及・導入支援のための実態調査結果」p.19 厚生労働省 
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000093104.pdf

HACCPの広がり

ヨーロッパやアメリカ等では、食品の一部においてHACCPの義務化が実施されています。 東南アジアではHACCPの義務化には至っていませんが、アメリカ等の輸出に対応するために、各工場ではHACCPを導入するところも増えています。 多くの国でHACCPシステムを導入し受け入れられることで、世界的同一システムの導入が望まれつつあります。

世界の食品安全の流れ

現在世界的にHACCPシステムが広がっていますが、今後の課題として食品の安全性を向上させていくことが望まれます。 各国・地域で食品衛生の考え方に基づく取組みが進んでいますが、今回はヨーロッパとアメリカに関してご紹介します。

●ヨーロッパ(EU)
2004年より一次生産を除く全ての食品の生産、加工、流通事業者にHACCPの概念を取り入れた衛生管理が義務付けられ、2006年には完全適応となりました。 なお、中小企業や地域における伝統的な製法等に対しては、HACCP要件の「柔軟性」 が認められています。

●アメリカ
1997年より、州を越えて取り引きされる水産食品、食肉・食鳥肉及びその加工品、果実・野菜、飲料について、順次、HACCPによる衛生管理を義務付けています。 2011年1月に成立した「食品安全強化法」では米国内で消費される食品を製造、加工、包装、保管する全ての施設のFDAへの登録とその更新を義務付けています。
また、対象施設においてHACCPの概念を取り入れた措置の計画・実行を義務付けています。

※「HACCP導入普及推進の取組」p.13~14 厚生労働省 
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000076152.pdf

最後に、食品にテクネ計測が貢献できること

テクネ計測の露点計や温湿度計をはじめとする各種計測機器は、食品業界に多数の実績があり、様々な場面でお役に立っています。 上記に記載した内容は一例であり、用途の種類は数えきれないほどです。皆様の食卓に並ぶ食品の品質を少しでも改善出来れば、当社にとって最大の喜びです。

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