電池
リチウムイオン電池/全固体電池・燃料電池の露点計・湿度測定(ドライルーム等)
新型コロナウイルスの蔓延により、私たちの日常は大きく変わりました。
リモートワークも一般的になり、一層電子化が進み、スマートフォンやタブレット、パソコン等はなくてはならないものとなりました。
これらの電池に「リチウムイオン電池」がよくつかわれています。長寿命で小型なだけでなく、実は環境にも優しい電池であることをご存じでしょうか?持続可能(サステイナブル)な社会を目指すためにも、効率的で環境に良いリチウムイオン電池や燃料電池が重宝されています。
リチウムイオン電池や燃料電池の製造・開発過程においても、湿度・露点管理は大変重要になってきます。
今回はこのリチウムイオン電池や全固体電池、燃料電池の概要と製造過程においてテクネ計測の機器がどのようにお役に立てるかご紹介いたします。
電池とは
電池とは、物質の化学反応や物理反応によって放出されるエネルギーを電気エネルギーに変換する装置のことです。再度充電できない一回使い切りのものを一次電池、再充電でき何度も使えるものを二次電池といいます。リチウムイオン電池は二次電池にあたります。
電池のこれまで
科学史上最古の電池と言われているのが、1800年に開発されたボルタ電池です。正極に銅(Cu)板と負極に亜鉛(Zn)板を用い、電解液には希硫酸(H2SO4)を用いることで、化学反応によって電気を取り出していました。
デメリットとして、電気が起き続けると、銅板の周りに水素(H2)が溜まってしまい、電子の受け渡しに不具合が生じ、電気が流れにくくなります。このようなデメリットにより、実用化には至りませんでした。
それから、鉛蓄電池、ダニエル電池、水銀電池等といった様々な電池が開発されていきました。鉛蓄電池は、自動車等のバッテリーに現在も多く使われております。1900年代には、アルカリ/マンガン乾電池などが家庭内にも普及され始めました。
現在は、環境にも優しいリチウムイオン電池・全固体電池・燃料電池が開発され、主流となっております。
特に、二次電池のリチウムイオン電池は、1980年ごろより研究されており大半のモバイル機器(スマートフォン、パソコン等)に用いられており、私たちの生活には欠かせないものとなっております。リチウムイオン電池の製造には、テクネ計測の製品も深く関わっています。
二次電池~リチウムイオン電池/全固体電池~
リチウムイオン電池は、正極材と負極材間をリチウムイオンが移動することで充放電を行う二次電池です。
リチウムイオン電池/全固体電池の材料
【正極材】
リチウムイオン
※含有遷移金属酸化物 例:LiCoO2等のコバルト系、LiMn204等のマンガン系 等
※リチウムは元素周期表で3番目にあり、金属の中では最も軽く同時に電子を放出しやすい特徴を持っていること(電気陰性度が高いこと)から、電池に適していると考えられ採用されています。
リチウムの主な産出国はオーストラリア、チリ、アルゼンチンです。
【負極材】
炭素系の材料
例:黒鉛、グラファイト、ハードカーボン、チタネイト、Ge、Si等
【セパレーター】
環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合溶媒にLiPF6やLiBF4などの電解質塩を溶解させたもの
【容器】
金属ケースやラミネート材等
リチウムイオン電池には、環境負荷が高い水銀やカドミニウムなどが使用されていなく、地球にやさしい電池といえます。
リチウムイオン電池/全固体電池/硫化物系電池の原理
リチウムイオン電池内の正極と負極の材料はそれぞれ層状の構造になっています。リチウムイオンが正極と負極の間を移動する仕組みです。
エネルギーを蓄積する充電と、エネルギーを使う放電ではその動きが違います。
リチウムイオンは正の電荷を持っている(Li+)ので、リチウムイオンを含んだ負極の材料からリチウムイオンが出ていくと、負極は負の電荷をもちます。
この負の電荷を電子として電池から取り出すことで、電力を得ることができます。これが放電反応です。一方で、外部から電気を流し込んで負極の中に電子を取り込ませると、負極材料が負の電荷をもちます。この負の電荷を打ち消すために、正極側からやってきたリチウムイオンが負極に取り込まれます。これが充電反応です。
電解質が固体の場合、全固体電池と呼ばれます。
硫化物系電池は、リチウムイオン電池・全固体電池と同様な原理です。
電解質を硫化物にすることで、酸化物系に比較して、イオン導電率が高く、可塑性も高いので研究が進められております。
リチウムイオン電池/全固体電池/硫化物系電池にテクネ計測が貢献できること
リチウムイオン電池・全固体電池の製造工程において、水分は大敵です。
水分が混入してしまうと、品質の劣化につながるだけでなく、想定外の化学反応が発生し、火災や爆発などを引き起こす危険性もあります。
そのためリチウムイオン電池の製造工程は、ドライルームやグローブボックス内で行われます。
製造工程における厳しい条件をクリアするため、温湿度や露点温度を計測し、管理することが重要になります。
またドライルーム内を乾燥状態に保つためのコストを最低限に抑えるためにも、常に環境計測を行うことが大切です。
硫化物系電池向けに硫化水素計にて硫化水素濃度の管理や、塗工工程における温湿度管理にEE33温湿度露点計が使用されています。
溶剤雰囲気下において特に力を発揮するTE-660高分子式露点計をはじめ、TK-100静電容量式露点計、MBW973鏡面冷却式(ミラー式)露点計が使用されています。
燃料電池
燃料電池は、一次電池や二次電池といった溜まった電気を使用するといったものではなく、 水素と酸素を反応させ、そのエネルギーを電力に変える電池です。燃料の持つ化学エネルギーから直接電気エネルギーを得るため、損失が非常に少なくて済み、発電と同時に熱も発生するため、効率が高く注目を集めている電池です。
燃料電池の材料
【触媒】カーボン系、白金等
【電解質膜】水酸化カリウム、リン酸等
【燃料源】天然ガス、純水素等
燃料電池の種類
燃料電池は電気化学反応と電解質の種類で、5種類に分けられております。
1) 固体高分子型燃料電池(PEFC)
2)アルカリ電解質型燃料電池(AFC)
3)リン酸型燃料電池(PAFC)
4)溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)
5)固体酸化物型燃料電池(SOFC)
燃料電池の原理
水の電気分解の逆反応を用いております。 燃料電池内は、板のようなセルがたくさん積み重なっております。セルには、正極、負極、電解質があります。負極で、白金(Pt)の触媒作用により、水素が水素イオンと電子に分解されます。そして、水素イオンは電解質を通って正極へ、電子は電線を流れて正極へ移動すします。正極で、空気中の酸素と電解質から通ってきた水素イオンと電子が反応し、水を生成します。
燃料電池にテクネ計測が貢献できること
燃料電池に使用される空気・水素・メタンなどの純度管理が行われます。純度の確認は準物の量で管理するのが一般的です。
よって、不純物の代表格である水分の少なさを測定して純度とします。
この目的で、TK-100静電容量式露点計が使用されています。
また、燃料効率を上げるためには燃料である水素やメタンへの加湿量が重要です。
一方、測定時の結露の発生を押さえる必要があります。このため、EE33温湿度露点計や
MBW573鏡面冷却式(ミラー式)露点計が使用され研究開発・性能評価に貢献しています。