農業

ビニールハウス・植物工場・保管庫・畜産業での温湿度計測・CO2計測

農業をイメージする画像

テクネ計測が貢献できる業界は工業界のイメージが強いかもしれませんが、実は農業においてもお役に立てます。農業では、温湿度・CO(二酸化炭素)濃度の測定管理を行っており、高湿度な環境やCOの多い環境、汚れやすい環境など様々な環境に対応するため、幅広い製品をご用意しております。 他にも、農産物の倉庫や保管庫での温湿度管理により良好な保存状態の維持や、畜産業では養豚・鶏舎の最適な環境維持のためにもこれらのパラメーターが重要です。 農業には大きく分けて、作物を育てる耕種農業と動物を育てる畜産農業の2つに分けられます。
今回はこの耕種農業や畜産農業においてテクネ計測の機器がどのようにお役に立てるかご紹介いたします。

耕種農業

お米や麦などの穀物・野菜・果物・花・木などの植物の農作物を育てる農業のことです。一般的に農業と聞いてイメージされる方が多いかと思います。 対象となる作物の種類も多く、栽培方法も多岐にわたります。例えば、田んぼで米を育てる稲作や畑を耕し育てる畑作があり、 そのうち屋外で行うものを露地栽培、屋内で行うものとしてビニールハウス栽培などがあげられます。栽培方法によって、温度・湿度・CO2などの適切な環境は大きく異なってきます。

●植物と湿度の関係

殆どの植物は呼吸をしていて、光合成により成長していますが、湿度によって光合成や呼吸量に影響があるといわれています。 その理由は、葉の表面にある気孔とよばれるごく小さい穴が周囲の湿度によって大きさを調整する作用があるためです。 植物に最適な湿度環境下では、穴を開いて葉から水分を蒸発し根から水や養分の吸収を促しながら、光合成に必要なCO(二酸化炭素)も取り込んでいきます。 一方で乾燥した状態では、植物に含まれる水が蒸発しないよう、気孔を閉じます。この状態では、根からの水や水分の吸収を促進することができないため、光合成も進みません。 よって、植物にとっては成長に適さない環境になります。このように気孔は、植物の成長に大きな役割を担っているため、 気孔が開く最適な状態に維持できると光合成が進みより効率的に農作物を生産することができます。

●ビニールハウスと二酸化炭素(CO)の関係

ビニールハウスのようなある程度閉鎖された空間で大量の作物を育てていると、植物が光合成によって吐き出した酸素量が多くなり、二酸化炭素量が減ってしまう場合があります。 ですから、ビニールハウス内のCO濃度を計測し管理することはとても重要です。 特に冬場は、外気を入れてしまうとハウス内の気温が低下する恐れがあり換気がされにくくCO不足の状態になりやすいです。 その対策として、ハウス内にCO発生装置を設置し、適切な量を保つ場合もあります。これについて詳しくは、「CO施肥」にて説明します。
テクネ計測では、計測機器にとって過酷な環境であるCO濃度の高い環境でも使えるものや、屋外での使用が可能な機器をご用意しております。 また、ビニールハウスによくある急な温度上昇に対応できるものや、朝晩の冷え込みによって湿度が上昇し結露となった場合でも、 検知部についた水分をヒーティング機能によって乾かすことができる機種(EE872)もございます。

●温室

温室では、季節に関係なく一年を通して同じ環境になるよう管理された室内で植物や野菜を栽培しています。 温室栽培の主な目標は、気候条件を最適に調整し、その結果として生産性を向上させることにより、理想的な栽培条件を提供することです。 最近では、水やり、照明・遮光、CO施肥、冷暖房などの空調、換気などのためのシステムを装備し制御されています。 植物の生育のためには、水と光と栄養素が必須ですが、それに加えて温度・湿度・CO濃度を適切な環境に整えることは、より良い成長に欠かせません。 温室内の環境は農作物の品質や収穫量に直結しますので、できる限り厳密に監視し制御していくことが大切です。

・CO施肥
これまでに説明したとおり、COは植物の成長を促進します。そのためCOを肥料としてあたえるCO施肥という方法があります。CO施肥の種類には2つ方法があります。 1つ目は、天然ガスまたは液体ガスを燃焼させてCO濃度を高めるCOジェネレーター(COキャノン)です 。燃焼時に発生する熱は、同時に温室の暖房にも使用されます。
2つ目は、ガスボンベバンドルまたはガスタンクから配管システムを介して温室に純粋な二酸化炭素ガスを導入する方法です。ガス供給の制御方法は手動のものも、完全に自動化されたものもあります。(一般的なCO濃度、照明条件、および換気を考慮に入れて)。

必要なCOの量は、温室の容積・気密性・換気によって異なります。また適切なCO濃度のレベルは、植物種によって異なりますが、原則600〜1200ppmの範囲です。基本的なルールは、植物の質量成長が高ければ高いほど、CO濃度が高くなるということです。 温室でのCO施肥は、より健康な植物とより高い収量を保証します。 CO施肥を使用する場合、いくつかの理由で温室内のCOを継続的に測定および監視する必要があります。
その理由はまず、COが多くなりすぎると植物の成長が遅くなり悪影響を及ぼすことがあるためです。
次にCOの生成と供給にはお金がかかります。CO含有量を監視することで、CO施肥を効率的に使用できるようになり、可能な限り最も費用対効果の高い方法で使用できるようになります。 最後に高濃度なCOは人体にとっては有害であり、めまい・頭痛・吐き気、さらには意識不明につながる可能性があります。したがって、法的に定義された最大職場濃度(MAK値)である5000 ppm(= 0.5%CO)を超えてはなりません。これが、温室運営者がCO濃度 に注意を払わなければならない理由です。空気中のCO濃度を測定する手段としてCOセンサーが選ばれています。

このような用途で使用する場合、COセンサーは温室内の環境条件に対応する必要があります。 高湿度や結露、不純物の混入、肥料や農薬、除草剤、殺菌剤(過酸化水素など)への暴露は、センサーにとって特に厳しい条件となります。 センサーエレメントへの結露による付着物は、測定精度を低下させ、腐食の原因となります。 このような計測機器にとって厳しい条件下でCOセンサーを長期に渡って確実に安定的に動作させるためには、技術的な適性を見極めながら慎重にテストする必要があります。

●キノコ栽培(センサーにとって厳しい環境条件)

きのこ栽培は、屋内栽培の特殊な形態です。キノコ農場は、食用キノコの自然な成長条件を可能な限り忠実に再現します。堆肥の準備から菌床栽培の開始と収穫まで、キノコ栽培のさまざまな段階を通して、湿度、温度、およびCO濃度を非常に正確に制御する必要があります。理想値からの逸脱は品質に影響を与え、収穫量を減らします。

センサーにとって恒常的に高い湿度(95%RH以上)と放出された真菌の胞子や菌糸による汚染は、かなり厳しい問題となっています。そのため、産業用キノコ栽培のためのセンサーには、汚染に極めて強く高湿度条件下でも正確かつ信頼性の高い測定が求められます。 また、常に高い湿度と放出される胞子があっても、信頼性の高い測定結果を提供しなければなりません。計画外の狂いが生じると、キノコの生育や収穫に悪影響を及ぼします。 特にセンサーの検知部が長期間にわたり高湿度にさらされると、結露や結露に起因する付着物が腐食し測定性能を低下させることがあります。 キノコの胞子は機器のどこにでも定着する可能性があり、真菌糸による汚染により不正確または誤った測定結果が発生する可能性があります。 このためキノコの産業栽培では、特に汚染に強く、高湿度条件下でも正確で信頼性の高い測定が可能なセンサーが必要とされています。

●植物工場

日本全国には、約400か所の植物工場があります。 植物工場とは、施設内で植物の生育環境(光、温度、湿度、二酸化炭素濃度、養分、水分等)を制御して栽培を行う施設園芸のうち、環境及び生育のモニタリングを基礎として、高度な環境制御と生育予測を行うことにより、野菜等の植物の周年・計画生産が可能な栽培施設をいいます。(農林水産省HPより引用) 植物工場には、完全に閉鎖された空間で人工の光を使って栽培される「完全人工光型」と、ガラスなどでできていて太陽光を使った温室などで栽培される「太陽光利用型」があります。 どちらも、植物の成長に必要な環境を制御し、気候や病気など外的要因に左右されることなく安定的に安全で高品質な作物を生産できます。

畜産農業

家畜や家禽を飼育・孵化させる農業のことです。牛・豚・鶏・馬だけでなく、養蜂等の飼育も畜産農業に含まれています。 畜産農業の一部として、乳牛から牛乳をしぼり乳製品をつくる酪農もあります。 気温・湿度の移り変わりが激しい場合、寒暖差で家畜の体調も悪くなり生産性も落ちる場合があります。 例えば、鶏の産卵率の低下や汗腺が少なく暑さに弱い豚等は、体温の調節が難しくなります。そのため畜産農業でも温湿度管理が重要です。

倉庫

食品・薬品の保管には、品質管理や衛生の観点から温度・湿度の管理が欠かせません。 もし、高温多湿という悪環境で保管していると、細菌の発生や変色など商品に影響がでる場合があります。お客様の信頼や安全性を守る為、温湿度管理には大切な役割があります。

●野菜・果物などの倉庫

季節の果物や野菜を一年中提供するためには、果物を数ヶ月間保管する必要があります。 そのために制御したガス(CA)を備えた気密貯蔵室が使用されます。CA倉庫(貯蔵)では、倉庫内の温度・湿度・CO濃度および組成を正確に監視・制御します。 このような倉庫により、リンゴや梨などが通常の状態の3〜4倍の期間保管できます。

●CA倉庫

果物が成分、色、風味を可能な限り長く保つためには、常に低温かつ高湿度の部屋に保管する必要があります。 これに加えて、貯蔵の気体中の雰囲気の組成も貯蔵能力に大きな影響を及ぼします。 通常の空気は、約78%のN2(窒素)、21%のO2(酸素)、および0.04%のCO(二酸化炭素)と様々な不活性ガスで構成されています。 CA倉庫では、窒素を加えることによって常に酸素量を少なくします。同時にCO含有量が増加することで、自然な熟成プロセスが遅くなり、果実の品質が長期間維持されます。

CA倉庫の雰囲気の構成は、特定の果物または野菜の種類によって異なりますが、一般的な保管条件は、以下の範囲です。

 ・O2濃度:< 2 %
 ・温度:0.5〜5 °C
 ・CO濃度:0-5 %
 ・湿度:最大98 %RH

●DCA(動的制御雰囲気)倉庫

貯蔵された果実は、細胞呼吸を通じて周囲の空気に 熱、水、CO、C2H4(エチレン)を絶えず放出し、貯蔵内の雰囲気の組成を随時変化させています。 そのため、DCA倉庫では、酸素含有量とC2H4およびCOが継続的に監視され制御されています。 理想的な保管条件を確保するために、CA / DCA倉庫には、冷却・空調・加湿・ガス管理のためのさまざまな技術システム(窒素発生器等)が装備されています。 最適な保管条件を保つために、正確なセンサーは必要不可欠です。

・CA / DCA保管室での湿度・温度・およびCOの測定
湿度・温度・およびCOは、CA/DCA倉庫で監視する必要がある最も重要なパラメーターの1つです。倉庫内は厳しい状況にあるため、センサーには以下の条件があります。

 ・高い測定精度(<2 %RH)と高湿度条件下での長期安定性
 ・汚染に強い測定原理を採用、自動校正機能付き
 ・化学的汚染に強い
 ・結露に強い
 ・保護等級IP65以上の筐体
 ・メンテナンスが容易で、故障時のセンサー交換も容易

最後に、農業にテクネ計測が貢献できること

以上のような計測機器にとって特に厳しい条件下でも使用可能な湿度・温度・COセンサーをテクネ計測はご用意しております。 テクネ計測の露点計や酸素濃度計をはじめとする各種計測機器は、農業業界に多数の実績があり、様々な重要な場面でお役に立てているのではないかと考えます。

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