質量分析計とは
質量分析計は、科学分析において、気体中の微量物質の分析と同定・定量をおこなうのに欠かせない装置です。
質量分析計では、分析したい「物質」を構成する、それぞれの「原子や分子」をイオン化して、その質量と電荷の状態を計測します。
計測された質量データを収集・解析し、既存データと参照することにより、原子と分子からなる当該「物質」が、どのようなものかを同定することができます。

質量分析計の原理
質量分析計では、物質を構成する原子や分子をイオン化する段階、イオン化された原子や分子を質量に応じて分離する段階、分離イオンを検出し質量スペクトル(MS)を得る段階、さらにデータ解析をおこなう段階、の4つの段階で分析されています。

原子や分子をイオン化する段階
イオン化段階では、分析する物質を構成する原子や分子をイオン化し気体状とします。
イオン化には、物質の安定性や分子量などの特性に応じて、電子イオン化法 (EI)、化学イオン化 法(CI)、マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)など、さまざまなイオン源が用いられます。
【コラム】イオン化とは?
原子や分子内の電子(e-)を失ったり、得たりすることで、電荷をもつ状態になることを「イオン化する」と呼びます。
正の電荷をもつものを陽イオン、負の電荷をもつものを陰イオンと呼んでいます。
イオン化する理由としては、よりよい安定した状態になる結果、陽イオンや陰イオンになります。例えば、酸化還元反応等の化学反応、電圧・電流をかけてイオンを分離、紫外線などで電子をはじく、高温、高速粒子との衝突などでイオン化します。
イオン化されたイオンの状態は、物質の全体的な状態や温度などによって決まります。
例えば、溶液内の化学反応での場合は液体に、プラズマ状態の場合は気体になります。
イオン化することにより、安定するかしないかは条件によります。
多くの原子は、原子の最外殻電子の数が満たされた形になろうとします。例えば、ナトリウムは、M殻の最外殻電子の数が1個な為、この1個を失うことで、L殻の最外殻電子の数が8個になり、1価の陽イオンになります。
金属イオン等の一部のイオンは、不安定な為他のイオンや分子とすぐに反応して別の化合物や電子配置に変わろうとします。
イオン化された原子や分子を分離する段階
イオン化された原子や分子は、それぞれの電荷を持つ質量(m/z)に応じて、電磁気作用を用いて分離されます。
代表的な分離方法としては、四重極型、イオントラップ型、飛行時間型 (TOF) などの手法があります。
・四重極型
フィラメントに電流が連続的に流され、加熱されて電子が放出されます。
フィラメントは電子の衝撃を受け、正に帯電したイオンを生成します。

正に帯電したイオンは、負電圧がかかっているレンズスタックに引き寄せられます。
イオンはイオナイザーから引き出され、四重極質量フィルターへと送られます。
キャピラリーから少量のサンプルがイオナイザーへと漏れ出します。

電極は4本の金属棒から構成されています。
棒が対向になっており、各々DC電圧とRF電圧になっています。
イオン化された原子や分子が、このDCとRFでの電圧の変化によってイオンの質量がふるいにかけられ、該当のイオン以外は途中で除去されます。

最後に通過したイオンのピークが検出されます。
シンプルな構造の為、広範囲で使用されております。

【もうひと踏み込みコーナー】はじかれたイオン(不安定な軌道に乗ったイオン)はどこにくの?
外部に排出されたり、電極に衝突して消失されます。このイオンが他のイオンに影響をうけることはありません。
・イオントラップ型
四重極型とは逆の方法で、RF電圧を加えることでイオンを空間内に閉じ込めたり、特定のイオンを放出させ、検出する方法です。
・飛行時間型 (TOF)
イオンの飛行時間を計測することで検出する方法です。飛行時間(t)は、イオン質量(m)と速度(ν)に依存されます。
E=加速エネルギー、d=イオンが移動する距離

…運動エネルギーの式

…①

…②
①と②を組み合わせて、

となります。
飛行時間が短いほど質量が小さいという関係に基づき、イオンの質量が算出できます。
◇ イオン化された原子や分子を検出する段階
分離されたイオンは、次に検出器で検出され、電荷に応じた電流量に変換されます。その電流量が、質量スペクトル(MS)の縦軸強度に対応します。
質量分析によって得られる質量スペクトル(MS)は、横軸に質量(m/z)、縦軸にイオン強度をとった二次元チャートで表しています。
◇ データ解析の段階
質量スペクトル(MS)を分析することで、物質の分子量、分子構造、組成などを同定することができます。データ解析では、既存データのスペクトルと対比することにより、含まれる物質の構造推定などを行うことができます。
質量分析計の特徴
質量分析計は、特に微量物質の分析や解析に大きな効果を発揮します。
宇宙空間を含めて、地球上のすべての「物質」は、「原子と分子」から構成されています。宇宙空間の彗星などの表面から回収されたごく微量な「物質」があれば、その物質がなにか、たとえば生命の起源にもつながる有機物質関連の物質かどうかなど、質量分析計での解析が可能です。
このような微量分析やさらには医薬品開発まで、質量分析計は、科学技術における基礎研究から応用面まで幅広く利用されています。
テクネ計測の質量分析計
当社ではEXTREL四重極質量分析計を販売しております。
特徴としては、
1) 高精度
イオンの棒が長く大きく、正確性と分別力が高いです。
2) 高分解能
分解性能がよいため、データの出力も細かく滑らかになります。
また、ほぼ100%に近いイオン化効率を実現し、非常に優れた検出感度を実現します。
当社で販売する製品VeraSpec™ APIMSのバルクガス中の検出限界微量不純物の表

※アルゴン、窒素などの追加の汚染物質は調査可能です。これらの特定のLDLsを測定するための試験の対応中です。
詳細についてはお問い合わせください。
3) 長期安定性
フィルターの材質が特別な仕様な為、クリーニング頻度が低く、扱いやすいです。
4) 使いやすいソフトウェア
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実績のある構成済みのEXTRELコンポーネントは、作業に合わせてカスタマイズされた質量分析計に迅速かつ容易に組み込むことができます。精密な調整、真空中の配線、システム制御は複雑な問題となる場合があります。これらの分析装置は、機能性とメンテナンスの容易さを考慮して設計されています。
各アプリケーションにはそれぞれ固有の機能が必要です。当社の実績ある構成済みコンポーネントは、お客様のプロジェクト固有の要件に合わせてカスタマイズされた質量分析計に迅速かつ容易に組み込むことができます。
Extrelは過去50年間、学術、研究、プロセスの世界で四極質量分析計において世界のリーデングカンパニーと位置づけされています。 1964年にエクスラニュウクリア研究所(Extranuclear Laboratories)としてピッツバーグ大学の教授Ted Brackmann とWade Fiteの両名によって革新的な質量分析を供給するため設立されました。
1985にエクスラニュウクリア研究所(Extranuclear Laboratories)は質量分析計の製作に集中するためにエクストレルコーポレーション(Extrel Corporation)から2004年にExtrel CMS LLC、現在Process Insight社となりました。

質量分析計の主な用途
・半導体超高純度ガスCQC(Continuous Quality check)システム
・排気ガスの分析用途
・温室効果ガス削減効率確認用途。
・ガスメーカーでの品質(ガス純度)確認用途
【もうひと踏み込みコーナー】ガスクロマトグラフィーとは?
質量分析計と同様気体の微量物質の分析と同定・定量をおこないます。
最近では、液体も測定できる液クロマトグラフィーもあります。
熱伝導度検出器を備えた場合、目的の成分含有量が通常の10分の数パーセント~数十パーセントのものの測定を対象としています。目的の成分含有量がこの濃度以下であれば、応答が確認できず、検出できません。なので、高感度検出器の適用や分離管技術の駆使、微量成分の濃縮、などを行う必要があります。
≪ガスクロマトグラフィーの原理≫
試料をガス状態にしてカラム(分析用の管)内を移動させ、その移動過程で異なる成分が通過する速度で分離されるという原理に基づいています。
クロマトグラム上に現れるピークの位置を、既知の化学物質と比較することで、成分を同定します。
定性分析を得意としている為、質量分析計と合わせて定量・定性分析を行っています。